北前船や高瀬舟が寄港する西日本有数の港町として江戸時代より栄えた玉島。ひっきりなしに船が行き交った玉島港を見下ろす眺めのよい山の斜面に、九棟の離れが建つ。料亭として創業した『備後屋』である。ふもとの船宿とは趣を異にした風流な空間は、「玉島の奥座敷」として評判を呼び、多くの文人墨客、政治家、医師などの名士が訪ずれ、時を過ごしたという。
美しい石段で繋がれた数奇屋造りの離れは、それぞれに趣が異なり古きよき日本を偲ばせる。こちらでの食事は、その離れを一棟貸切(人数や予約状況によっては個室貸切)でゆっくりと愉しめる。現在も料亭旅館として営業を続ける『備後屋』。その料理には100年を超える経験と誇りが息づく。目の前が海という立地を生かして、なるべく瀬戸内海産の新鮮な魚を用い、目でもおいしく味わえるよう繊細な仕事を施している。ランチで味わえる写真の「松花堂弁当」3990円は、和え物、向付、焼物、煮物、油物、酢の物、留椀、水物が美しく配され、ふたを開けた瞬間、感嘆の声が上がることも少なくないそう。山の斜面に建つゆえ、予約時に客のコンディションを聞きとり、案内する部屋の場所を配慮したり、座敷に椅子を入れたりと、細やかに心を配っている。そんなおもてなしの心が居心地のよいひと時を約束してくれる。(2018年3月時点の情報です)
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